ドイツ時計の伝統技法その2「スワンネック緩急針」とは?

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皆さんこんにちは。アストです。
ドイツ時計の伝統技法その2「スワンネック緩急針」のお話です。
前記事「真のランゲはどれ?ドイツ時計の歴史」
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スワンネック緩急針とは、画像の赤い丸の部分。
その名の通り緩急針調整装置の一形態です。
緩急針調整装置というのは、テンプの速度を微調整するための装置です。
ヒゲゼンマイの有効長さを変えて張力を調整することによって、テンプの回転速度を変化させ時計の精度を調整します。
スワンネック緩急針の他にも、エタクロン緩急調整装置、トリオビス緩急調整装置等、いくつか種類があります。
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スワンネック緩急針は、緩急針装置の中でもとりわけ見栄えに優れるため、高級なモデルに採用されることが多い方式です。
緩急針を片側からバネで押さえつけ、もう片側からネジで調整します。
針に対して両側から力がかかっているので、多少の衝撃でズレてしまうことはなく、非常に安定性の高い装置です。
針を押さえるバネの形状が白鳥の首に似ていることから、スワンネックと呼ばれます。
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緩急針装置に対する構造として、フリースプラング式というものもあります。
画像はパテックフィリップのムーブメントですが、緩急針を持たない構造になっていることがお分りいただけますでしょうか。
ヒゲゼンマイの力は固定したまま、チラネジのような装置でテンプの慣性モーメント(回りやすさ)を変えることで時計の精度を調整する仕組みです。
緩急針装置ほどの調整可能範囲はありませんが、安定して高い精度が出せる機構になっています。
また、ヒゲゼンマイが完全にフリーになっているため、ヒゲゼンマイの耐久性が高く、丈夫です。
記事「高い時計にはついてる?美しいテン輪を作る「チラネジ」って?」
ちなみに、パテックのテンプに搭載されているのはジャイロマックスという機構。
重心の偏った『C』の形をした小さな部品を回転させることでテンプの慣性モーメントを変化させます。
パテック特有の機構だったのですが、最近ではランゲも採用していますね。
簡単な記事でしたが今回は以上です。
工作精度の高い今時の機械式時計では、チラネジと同様に飾りとなりつつある機構ですが、その見栄えの良さはやはり譲れません。
以上、アストでした。